映画『タロウのバカ』は、学校にも行かず戸籍もない“タロウ”という少年を中心に、社会の枠からこぼれ落ちた3人の少年の「どうしようもない今」をむき出しで映し出す一本です。
大人のルールも常識も届かない場所で、タロウ、エージ、スギオが暴れ回る日々は、ただの不良の暴走ではなく、行き場のないエネルギーが空回りしているような、なんとも言えない切なさがあります。
そんななかで登場する植田紗々の役どころは、大人でも子どもでもない危うい年頃の女性で、彼女が関わる性的なシーンも、単なる刺激ではなく、孤独や諦めがにじむ生々しい瞬間として描かれます。
少年たちの無邪気さと残酷さ、やり場のない苛立ちと一瞬だけ見える優しさが、崩れかけた“この社会”の風景と一緒にぶつかってくるような作品で、観ている側にも「自分はこの世界のどの立場なんだろう」と問いかけてくるように感じました。
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目次
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映画『タロウのバカ』あらすじ紹介
映画「タロウのバカ」は、いわゆる「普通」のレールから外れてしまった若者たちの姿を通して、現代の日本が抱える歪みをあぶり出す作品です。
タロウ（演：YOSHI）、エージ（演：菅田将暉）、スギオ（演：仲野太賀）。
3人は家族にも学校にも馴染めず、街をふらつきながら、その日その日をやり過ごしています。
大人たちへの反抗とも、単なる悪ふざけともつかない衝動に突き動かされ、3人は盗みや喧嘩、いたずらをエスカレートさせていきます。
とくに戸籍もなく、制度の外側で生きてきたタロウは、「ルールの外にいる自分」を、どこか誇らしげに感じているようにも見えます。
しかし、笑いながら暴れていたはずの行動は、次第に引き返せない方向に転がり始めます。
ちょっとした悪ふざけが、本物の犯罪に変わり、血の匂いが混じり始める頃には、3人とももう簡単には止まれない地点に来てしまっています。
その周囲で登場するのが、植田紗々演じる洋子です。
彼女は大人の男たちと危うい関係を持ちながら生きていて、少年たちの粗暴な行動にも簡単には動じません。
どこか達観したような目をしながらも、内側には怒りや諦めを抱えた女性として、物語に重さを加えています。
映画は、彼らが暮らす「社会の底」の風景を、きれいごと抜きで切り取っていきます。
暴力や薬物、性のにおいがただよう世界のなかで、それでも彼らがふと見せる笑顔や、仲間を思う一瞬の優しさが、観ている側の心をざわつかせます。
洋子は、そんな少年たちと距離を取りながらも、ときに寄り添い、ときに突き放す存在として描かれます。
彼女自身もまた、この社会の中で居場所を見つけられずにいる人物であり、若さと弱さ、したたかさが同居したような複雑なキャラクターです。
「タロウのバカ」が映し出すのは、ただの不良映画やバイオレンス映画ではありません。
親や先生の説教では届かない場所で、彼らなりのやり方で叫び続ける“声”そのものです。
その叫びが、甘えなのか、怒りなのか、助けを求めるサインなのかは、観る人によって受け取り方が違うかもしれません。
作品は答えを用意せず、「この現実を前に、自分ならどう向き合うのか」を静かに突きつけてきます。
痛みだらけで、正直見るのがしんどい場面も多いですが、その分だけ、現代を生きる若者たちがどんな地面の上に立たされているのかを肌で感じられる作品です。
植田紗々の危うくも芯のある演技も含めて、「目をそらさずに最後まで観る」覚悟が試される一本だと思います。
映画『タロウのバカ』基本情報・キャスト
| 評価 | 2.8 |
|---|---|
| 公開日 | 2019年9月6日 |
| 上映時間 | 119分 |
| 監督 | 大森立嗣 |
| 脚本 | 大森立嗣 |
| 原作 | |
| キャスト | YOSHI,菅田将暉,仲野太賀,奥野瑛太,植田紗々,豊田エリー,國村隼,角谷藍子,門矢勇生,荒巻全紀,ACE,葵揚,水澤紳吾,池内万作,伊達諒,中島朋人,大谷麻衣,播田美保,水上竜士,小林千里,原沢侑高,伊藤佳範,大駱駝艦 |
| 製作国 | 日本 |
映画『タロウのバカ』見どころ3選！
植田紗々の可愛いだけじゃない新境地
「タロウのバカ」の植田紗々は、いわゆる“可愛い若手女優”の枠から、かなり踏み込んだ芝居を見せてくれます。
それまでの作品では守られた役どころが多かった印象ですが、本作では荒んだ空気の中に放り込まれるキャラクターで、目の奥に疲れと諦めが張りついているような表情がすごく印象的です。
笑っていてもどこか冷めていたり、ふとした瞬間に視線が空っぽになったりするので、「この子もこの世界の被害者なんだな」と伝わってきます。
身体を張った場面もあり、若さゆえの危うさと、どこか達観した雰囲気が同時に漂っているのが、この作品ならではの魅力です。
単に“可愛い子が出ている映画”ではなく、「この女優、ここからどう変わっていくんだろう」と気になってしまう、ターニングポイントの一本になっていると感じました。
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物議を醸すエロシーン
この映画が公開当時から話題に上がった理由のひとつが、かなり攻めた性的な描写です。
肌の露出をともなうシーンや、荒っぽい扱いを受ける場面があり、観ていて不快感を覚える人もいるかもしれません。
ただ、それが“お楽しみ要素”としてではなく、この世界で若者たちがどのように扱われているのか、どんな目線にさらされているのかを見せる装置として使われているのがポイントだと感じました。
友人同士でこの映画の話題になるとき、多くの人が真っ先に「あのシーン、どう思った？」と語りたくなると思います。
そこから、「このシーンを入れることで何を言いたかったのか」「何が許せなくて、何が引っかかったのか」を話し合える、ある意味きっかけを用意してくれるエロ描写になっています。
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刺激的な濡れ場とヌードシーン
「タロウのバカ」に出てくる濡れ場やヌードシーンは、決して軽いノリのアダルト要素ではありません。
そこに映っているのは、守られることの少ない若者たちの身体と、その裏側にある無防備さ・脆さです。
服を脱がされることや肌をさらすことが、単なる“エロ”として消費されるのではなく、この社会の中でどれだけ簡単に境界線が踏みにじられてしまうのかを映し出しているように見えました。
そうしたシーンがあるからこそ、暴力と性が入り混じる世界の現実味が増し、物語全体の説得力も強くなっています。
観る側としては、ただ楽しむのではなく、自分がその場に居合わせたらどう感じるのか、どんな行動を取れるのかを考えさせられる、重たいけれど意義のある描写になっていると思います
映画『タロウのバカ』エロい濡れ場やヌードシーン
植田紗々の濡れ場
植田紗々が見せる濡れ場は、この作品の空気を一気に変えるシーンになっています。
彼女が肩をすくめるように力を抜いたり、相手から視線をそらしたりする細かな仕草に、強がりとあきらめが同時ににじんでいて、見ていて思わず息を飲みました。
肌をさらす場面でも、ただ「見せる」方向に振り切るのではなく、触れられたときに少しビクッと反応してしまう感じや、押し寄せるような息づかいから、キャラクターの不安定さが伝わってきます。
身体を張った演技であることは間違いないのですが、それ以上に、洋子という人物が抱えている孤独や虚無感を画面の中に刻みつけていて、単なる濡れ場として片付けるにはもったいない印象的なシーンでした。
植田紗々のSEXシーン
作中で植田紗々が登場するSEXシーンも、いわゆる「エロ目的」のカットとは少し違う手触りがあります。
相手との距離が一気に近づくのに、どこか心だけは置き去りになっているようで、その温度差が見ていてつらくなる場面です。
抱き寄せられたときのこわばった肩、力の抜けた腕の位置、諦めたように閉じた目元など、細部にキャラクターの心の状態がにじみ出ています。
性行為そのものを強調するのではなく、「ここまでしないと自分の居場所が保てない」と感じているような切なさが滲んでいて、観客としてもただの刺激シーンとして消化しづらい複雑な感情が残りました。
このシーンのおかげで、洋子という人物の輪郭が一気に立ち上がってくるように感じます。
植田紗々のその他エロシーン
植田紗々が挑んでいるのは、一発勝負の濡れ場だけではありません。
作中には、露出こそ控えめでも、性的な緊張が漂うシーンがいくつか登場します。
例えば、男たちの輪の中にぽつんと座っている場面では、脚の組み方ひとつ、視線の泳がせ方ひとつで、「ここから逃げられない」と感じているような息苦しさが伝わってきます。
身体を寄せられたときにほんの少し身を引く動きや、笑ってごまかそうとする表情も、すべてキャラクターの防衛本能のように見えて、胸がざわつきました。
そうした積み重ねがあるからこそ、彼女が本格的な濡れ場に踏み込むシーンに重たさが生まれます。
攻めた演技に挑戦していることはもちろんですが、それ以上に「この世界で女として生きる」ということの窮屈さや危うさがじわっと滲み出ていて、植田紗々の新しい一面を感じられるパートになっていました。
映画『タロウのバカ』予告編
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映画『タロウのバカ』完成披露上映会
映画『タロウのバカ』感想
驚愕のバイオレンス描写
「タロウのバカ」を観てまず頭にこびりついたのは、少年たちの暴力シーンの容赦のなさでした。
親や大人からまともに扱われてこなかった彼らが、笑いながら物を壊し、人にぶつかっていく姿は、単なる不良の暴れっぷりというより、どうしようもない寂しさの裏返しのようにも見えます。
銃を手に入れるくだりは、スクリーン越しでも背筋がピンと張るような緊張感があって、「ここから先は本当にまずいぞ」と心の中で何度もブレーキを踏みたくなりました。
暴力の描写はかなり過激で、人によっては不快に感じる場面も多いと思います。
それでも、そこに至るまでの積み重ねを見てしまうと、ただ「悪いことをしている」では片付けられず、胸の中にモヤモヤしたものがずっと残る映画でした。
この映画だけの個性
「タロウのバカ」は、好き嫌いがハッキリ分かれそうなタイプの作品ですが、一度観るとしばらく忘れられない力があります。
テンポよく進むわけでも、分かりやすい感動を用意しているわけでもないのに、少年たちが笑いながら暴走していく様子を追いかけているうちに、自分の心も少しずつ削られていくような感覚になりました。
もし劇場で観ていたら、途中で耐えられなくなって席を立つ人がいてもおかしくないぐらい、観る側の体力を試してくる映画です。
殴り合い、怒鳴り合い、意味もなく笑い合うシーンが続くなかで、ふとした瞬間に見える弱さや優しさが、逆に刺さってくるのがこの作品の個性だと感じました。
エンタメとして「気持ちよくスカッとする映画」とは真逆ですが、こういう表現がちゃんと表に出てくること自体に、意味がある一本だと思います。
独特なストーリー構成
ストーリー展開については、「なんでこうなる？」と突っ込みたくなる場面も正直多いです。
いわゆる起承転結がきれいに決まるタイプではなく、ずっと落ち着かないまま転がり続けて、気づいたら手のつけられないところまで来てしまった、という印象でした。
障がいのある人が登場する場面もあり、その扱い方については見る人によって受け止め方がかなり違うと思いますが、個人的には「綺麗ごとだけで終わらせないぞ」という監督の意地のようなものを感じました。
ハッピーエンドを期待すると確実に裏切られますし、「これは何を描きたかったんだろう」と考え込んでしまう人も多いはずです。
それでも、予測不能な展開と、ところどころに挟まる静かな瞬間が妙に後を引いて、観終わってからじわじわ効いてくるタイプの映画でした。
楽しむというより、「自分はこの物語をどう受け止めるか」を試されているような感覚になります。
映画『タロウのバカ』まとめ
『タロウのバカ』は、社会の端っこで生きるしかなかった若者たちの現実を、きれいに飾らずそのまま突きつけてくる挑戦的な作品です。
暴力や差別、居場所のなさに直面しながら、それでもどこかで笑ってしまう少年たちの姿は、不快感と同時に、目をそらせない魅力も持っています。
観る側は、彼らの行動を「許せない」と切り捨てるのか、「仕方ない部分もある」と感じるのか、自分自身の価値観と向き合わされることになると思います。
感傷的な音楽やわかりやすい救いに頼らず、生の衝動や葛藤をそのままぶつけてくるスタイルなので、鑑賞後の余韻は軽くありません。
それでも、今の日本で若者たちがどんな地面の上に立たされているのかを考えるきっかけとしては、とても強い一本です。
重たいテーマとハードな描写に向き合う覚悟さえあれば、映画という表現がここまで生々しくなり得るのかを体感できる、貴重な作品だと感じました。
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